港町の心意気を山車にのせて
伏木曳山祭を彩るのは、7基の曳山。各町の山車は丹念に手入れされ、彫刻や装飾、福神やだし=鉾留(ほこどめ)もすべて異なる個性を放ちます。昼は華やかに、夜は提灯に灯され幻想的に。同じ祭りの中で、それぞれの曳山が語る物語を、ぜひ見比べて感じてください。町の想いが込められた一つ一つの曳山に、伏木の誇りと歴史が宿っています。

中町 ひょうたん山車

中町の曳山は、7基の中で最も早く建造された歴史ある山車です。だしに飾られる「ひょうたん」は、種から多くの実をつけることにちなみ、「子孫繁栄」の願いが込められています。また、下山部分が唯一「伊達柱」構造となっており、技術的にも注目すべき特徴を持っています。
| 山車名 | ひょうたん山車 |
| 鉾留 | 千成瓢箪(子孫萬代) |
| 福神 | 福禄寿 |

上町 ささ山車

上町は、かつて廻船問屋が立ち並び、にぎわいと富に満ちた町でした。山車の完成は中町より少し遅れましたが、福神の布袋像は最も早くに作られたとされ、早くから計画が進んでいたことがうかがえます。だしの「ささりんどう」は、気品ある姿で上町の歴史と誇りを今に伝えています。
| 山車名 | ささ山車 |
| 鉾留 | 笹竜胆(延寿長生) |
| 福神 | 布袋 |

本町 がんがら山車

本町の山車は、7町の中で唯一、女性の神様・弁財天を祀っています。前人形には、愛らしい和人形が飾られ、やさしく華やかな雰囲気が魅力。だしは密教の法具「五鈷鈴(ごこれい)」が元とされ、大きな鈴の音が「がんがら」と響くことから、親しみを込めてそう呼ばれています。
| 山車名 | がんがら山車 |
| 鉾留 | 鈷鈴(宝来招福) |
| 福神 | 弁財天 |

寳路町 せんまい山車

寳路町は、かつて神明社のお祭りで「母衣行列」として奉仕していたことから、「寳路(ほろ)」という縁起の良い字が使われたといわれます。だしの「千枚分銅」は金銀の重りを模したもので、「富貴蓄財」の願いが込められています。
| 山車名 | せんまい山車 |
| 鉾留 | 重ね千枚分銅(富貴蓄財) |
| 福神 | 恵比寿 |

石坂町 字山車

石坂町は、低湿地を開拓して誕生した新興の町です。曳山の見どころは、「菊慈童」にちなんだ大輪の菊の精緻な彫刻と、透かし彫り風の朱欄が施された高欄の独特なデザイン。だしの「寿」は、不老長寿への願いを象徴する吉祥文字で、山車全体に縁起の良さがあふれています。
| 山車名 | 字山車 |
| 鉾留 | 「寿」の字(不老長寿) |
| 福神 | 大黒天 |

湊町 ちょうちょう山車

比較的新しい町・湊町の曳山は、7基の中でも最大級の大きさを誇ります。唐木や褐色で統一された力強い彫刻に、朱と金地の鮮やかな装飾が映える、勇ましい美しさが魅力。だしの「胡蝶」は、木製叩き地に金箔を施した逸品で、曳山全体に格調高い存在感を与えています。
| 山車名 | ちょうちょう山車 |
| 鉾留 | 胡蝶(財宝福徳) |
| 福神 | 毘沙門天 |

十七軒町 ほら貝山車

かつて十七軒で所有していた山車が明治の大火で焼失したため、伏木の町とけんか山が永遠に発展することを願い平成27年に復元されました。高欄には「未来永劫」を表す鶴のほか、親子獅子や四神獣の彫刻が施されています。現在は、伏木コミュニティーセンターで常設展示されています。
| 山車名 | ほら貝山車 |
| 鉾留 | 法螺貝(未来永劫) |
| 福神 | 寿老人 |

